2死一、三塁のピンチを空振り三振で脱し、ドラフト5位の土生(BCL茨城)は「危なかった…」と胸をなで下ろした。これでオープン戦は3試合連続無失点。この日奪った6つの空振りは、全てスライダー。1軍クラスの打者にも通用する武器だと確信できた。
「僕は結果を残し続けないといけない立場。そのためにはどうすればいいかを突き詰めたい」
ほんの1年前、彼は水戸市内の家賃3万8000円のアパートに住んでいた。球団から支払われる月給は15万円。シーズン中の6カ月(計90万円)と試合でのわずかなインセンティブが、野球で得られる報酬の全てだった。もちろん、成人男性が暮らしていける額ではない。しかし、彼は「1年でNPBへ行く」。そう腹をくくり、独立リーガーの道を選んだ。
転機は何と「ストレートの握りを見直したこと」だった。どんな野球少年も自然と覚える基本中の基本。ポイントは親指の向きだった。
「それまでの指導者から『こっちの方がボールに力が伝わる』と教わっていた握りだと、僕は爪で引っかいてしまってすぐにボールが血まみれになっていたんです。だからボールに爪が当たらないように添えたら、真っすぐが安定するようになって、結果がついてきたんです」
ストレートの回転数は200も跳ね上がり、宣言通りに1年でドラフト指名された。独立リーグは慈善団体ではない。入団前に交わした契約に従って、中日からの契約金と年俸から規定の額をリーグと所属球団に支払う。総額は彼が得ていた報酬の数年分に相当する。言い方は悪いが、人を育て、人を売る。NPBに行きたい選手と行かせて利益を上げたいリーグ。それが野球界の新たな潮流となっている。
誰かから聞いた。「独立リーグは夢をかなえる場所であって、あきらめる場所でもある」と。確かにそう。だが、厳密には土生もかなえたわけではない。1年でつなげた夢を、もっと大きく膨らませる場所。この日奪った空振りを見る限り、彼はNPBの球を投げている。
https://www.chunichi.co.jp/article/866040
「僕は結果を残し続けないといけない立場。そのためにはどうすればいいかを突き詰めたい」
ほんの1年前、彼は水戸市内の家賃3万8000円のアパートに住んでいた。球団から支払われる月給は15万円。シーズン中の6カ月(計90万円)と試合でのわずかなインセンティブが、野球で得られる報酬の全てだった。もちろん、成人男性が暮らしていける額ではない。しかし、彼は「1年でNPBへ行く」。そう腹をくくり、独立リーガーの道を選んだ。
転機は何と「ストレートの握りを見直したこと」だった。どんな野球少年も自然と覚える基本中の基本。ポイントは親指の向きだった。
「それまでの指導者から『こっちの方がボールに力が伝わる』と教わっていた握りだと、僕は爪で引っかいてしまってすぐにボールが血まみれになっていたんです。だからボールに爪が当たらないように添えたら、真っすぐが安定するようになって、結果がついてきたんです」
ストレートの回転数は200も跳ね上がり、宣言通りに1年でドラフト指名された。独立リーグは慈善団体ではない。入団前に交わした契約に従って、中日からの契約金と年俸から規定の額をリーグと所属球団に支払う。総額は彼が得ていた報酬の数年分に相当する。言い方は悪いが、人を育て、人を売る。NPBに行きたい選手と行かせて利益を上げたいリーグ。それが野球界の新たな潮流となっている。
誰かから聞いた。「独立リーグは夢をかなえる場所であって、あきらめる場所でもある」と。確かにそう。だが、厳密には土生もかなえたわけではない。1年でつなげた夢を、もっと大きく膨らませる場所。この日奪った空振りを見る限り、彼はNPBの球を投げている。
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